糖質制限とはいったい何者なのか?

糖質制限とはいったい何者なのか?

今やテレビでもよく見かけるようになった「糖質制限」なる言葉。今一度、523流にまとめてみましょう。

そもそも糖質とは?

炭水化物と糖質は厳密には違います。

炭水化物は「糖質」と「食物繊維」を含みます。食物繊維は血糖値に関係ありません。

糖質制限という言葉を使うとき、制限すべきは「糖質」であって炭水化物ではない、ということになります。

ここが混乱していては後々の記事も語弊が生じますので、しっかり確認しておきましょう。

糖質はなぜヤバい?

それにしてもなんで糖質はここまで悪者扱い?されるのでしょうか。

①血糖値がヤバい

血糖値が上がるという現象自体は当たり前に聞こえますが、それが過ぎると血管の傷みに直結します。

血管が傷んだ場所に変質したコレステロールが溜まるのが動脈硬化。

傷んでなければそこにコレステロールが溜まることはなく、コレステロール自体の罪と言うよりも血糖値の罪と言うのがふさわしいでしょう。

中でも最近は「血糖スパイク」というキュッと血糖が上昇する現象こそが、血管の傷みにつながるということが分かってきました。

糖尿病・動脈硬化と直結する栄養素は糖質だったのです。

(図はお恥ずかしながらこぶさんの血糖スパイクです…笑)

②記憶力がヤバい

認知症も「脳の糖尿病」と言われます。動脈硬化が生じることは脳でも同じですね。いい血管でないと脳もやられるということになります。

アメリカで成果を上げた最新の認知症治療法「リコード法」でも糖質は控える指導がなされます。

③体重がヤバい

血糖値がピュッと上がると、膵臓からインスリンが分泌されます。

インスリンにはさまざまな働きがありますが、糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に取り込む働きもあります。

そうなるとお腹まわりや体重が…

④中毒性がヤバい

「白ごはんなしなんて考えられません」

「ごほうびスイーツが絶対必要よね」

脳はあの美味しさを強烈に覚えているのです。「美味しい」…実に罪作りなものです。

糖質制限にはこの「中毒性との戦い」な側面もあると思います。

健康のため!…と簡単に割り切れない…

そんなところにハードルを感じる方も居られるように思います。

この辺りのお話はまた場を変えて、取り上げたいと思います。

⑤老化がヤバい

糖質はカラダの構成要素であるタンパク質を劣化させます。

これを「糖化」と呼びます。

皮膚コラーゲンが糖化すれば「シワ」

血管コラーゲンが糖化すれば「キズ→動脈硬化」

筋肉タンパクが糖化すれば「ケガ」

どれも年齢のせいにしがちですが、それだけで片付けてよいものではなさそうです。

⑥メンタルがヤバい

血糖値がスパイクを起こして「ピュッと上がった」その後、血糖は急激に下がります。

そしてそれはカラダにとって結構なストレスとなります。

血糖が下がるときに自律神経は乱れ(正確には交感神経が刺激され)、イライラがつのります。

子どもの「キレやすい」という現象も血糖値スパイクと関連しているのではないかと主張している先生もおられます。

糖質は本当に悪か?

で、糖質は必須?

糖質は私たちのカラダの構成要素の1%にも満たない栄養素です。残念ながら体組成上は必須の栄養素とは言いにくいものがあります。

ではエネルギー源としての糖質はどうでしょうか。

糖分が必須!…と長らく考えられていた脳でさえ糖質は必須でなく、脂質から生み出されるケトン体でしっかり回転することが分かっています(ただし、糖質が潤沢に供給されるときには糖質が脳に優先的に供給されます)。

筋肉の中でもダッシュに関係する速筋と呼ばれる白い筋肉は糖質をもとにエネルギーを作ります(正確にはそれだけではないですが)。また、酸素の運び屋である赤血球は糖質をもとにしたエネルギー産生だけをします。

ただ、それ以外の臓器や細胞には糖質でなくともエネルギーを作り出す機能が備わっています。さらに速筋や赤血球についても「糖新生」と名付けられた、体内で糖を作り出すという営みでまかなえることがほとんどです(負荷が日常生活レベルの場合)。

ということで、カラダ全体で見てみても糖質は必須のものと言いにくいのが現状であります。

(すこし難しいですね…)

そもそも論を現代に当てはめる必要はないけれど…

これが正しい歴史認識なのかは分かりませんが、糖質制限を支持するヒトの論理として「大昔は狩猟や採集で生きてきた。糖質を摂っていたとしてもごく限られた量しか摂っていなかったから糖質はそもそも不要。」というのがあります。

こぶさんとしては「人間が進化していくのに応じて食事が変化していく」ことはあり得ることだとは思いますが、それは人間のカラダが糖質をガッチリ受け止められることが前提であります。

「糖質を受け止めきれないカラダが糖尿病という悲鳴を上げる…」という状況を拝見するたびに、

やはり糖質は少なくても良いのかなと思います。

糖尿病という病

繰り返しになりますが、人間のカラダが糖質を受け止められ「ない」状態、それが糖尿病ということになります。

人間の膵臓からは血糖値を下げる「インスリン」というホルモンが出ていますが、その作用が十分でないときに「糖尿病」と言われる状態になります。

インスリンの作用が十分でない、というのは

① インスリンが十分分泌されない
…1型糖尿病や日本人でしばしば見られるやせ形の糖尿病の方です

② インスリンの効きが邪魔されている
…いわゆるメタボリックシンドロームに関連した肥満型の糖尿病の方です

という2つの場合が考えられるわけですが、糖質を控えればその両方を考慮する必要がなくなることになります(極論です)。

糖尿病じゃなくても

たとえあなたが糖尿病でなくても、血糖スパイクがあれば同じようなことが起こっていると考えてもらっても良いと思います。

血糖スパイクを起こさない食生活、これがカギです。

それには糖質を控えればよい、という至極当たり前、至極単純な結論にたどり着くことになります。

糖質制限は奥深い

糖質制限はいろいろな奥深さを持っています。

ただ制限すればいい!というものでもないのです。

また、糖質制限には反対派、ガッツリやる派、緩やかにやる派などさまざまな流派があります。

今日は書き切れなかった糖質制限のアレコレ、まだまだ続きます。