分子栄養学の考え方

分子栄養学の考え方

84523では「分子栄養学」が「推し」です。今回は「それってどんな考え方?」ということをまとめてみます。

このようなタイトルをつけて説明するときにはおおよそその歴史を紐解くことから入るのが多いのですが、今日は「キモ」になることだけをお話します。歴史的な成り立ちもかなり興味深いものがあるのですが、これはまた次の機会に。

いきなりまとめ

おおよそこのような柱によって分子栄養学がなりたっていると考えて下さって良いと思います。宗教ではないのですが「流派」のようなものがあり、主張する人によって多少内容が異なる場合もあるものの、おおまかに上記をおさえておけば問題ないと思います。

分子栄養学のポイント

十分なカロリー

意外な感じがした方もおられるかもしれません。

もちろん何でもかんでも食べるということではありません。

人間はエネルギー産生を行い、代謝を行うときには十分なカロリーを必要とするようにできているのです。

問題はそのカロリーをどの栄養素で摂取するかということであります。

十分なタンパク質

カロリーのみならず、タンパク質の重要性が前面に押し出されているのが分子栄養学の考え方の大きな特徴です。

タンパク質は代謝酵素、消化酵素、熱産生、免疫、筋肉や血管その他全身のあらゆる細胞の元になるなど、重要で多彩な役割を担います。

そのタンパク質が十分摂取されなければ代謝、消化、熱産生、免疫、細胞作りなど、カラダの多くの部分に支障を来すこととなります。

これはさまざまな慢性疾患につながると考えられています。

健康を保つためには絶対に欠かせなず潤沢に摂るべき栄養、それがタンパク質なのです。

糖質の摂り方

ここは先ほど少しお話した「流派」によっても違いが出てくるところでもあります。

・糖質は少なければ少ないほど良い
・糖質は取り過ぎなければ良い
・糖質そのものは制限しないが少なくとも精製糖質(白米・小麦製品・砂糖など)は避けるべき

一番下の「精製糖質は避けるべき」というのが3つの中では一番ゆるい(相対的に)ですが、どの考え方も血糖値そのものがピュッと上がるようないわゆる「血糖スパイク」は避けよ!という主張については共通しています。

脂質の摂り方

糖質を控えるのであればその分のカロリーは脂質を少し増やすことによって対応する、ということになります。

その際、体内で炎症を起こしにくいω3不飽和脂肪酸(EPA・DHAなど)を多めにすると良いとされます。

ω6不飽和脂肪酸(サラダ油など)は摂りすぎてはダメ、トランス脂肪酸は摂ってはダメ、というスタンスになります。

(また脂質のお話は別の機会に必ず行います)

腸の考え方

近年腸の免疫力や脳との連携などがクローズアップされることが増えました。

分子栄養学でも腸を大切にしようとなっています。

腸内細菌が乱れると思わぬ炎症につながったり、栄養の吸収に支障が生じます。

良い腸のコンディションを保つことができれば、栄養や免疫や脳神経について有利に事を運ぶことができるでしょう。

ストレスマネジメント

これは栄養とは直接関係ないようにも見えます。

ストレスは体内で必要な栄養をムダに消費し、ホルモン分泌を狂わせることもあることから全身に大きな影響を及ぼすものです。

また、ストレスにより胃腸の力は弱り、消化吸収にも支障を来すこともあるでしょう。

そのため柱としてここに取り上げられているのだと考えます。

ちなみに、暴飲暴食もストレスのひとつと考えられます。

これまでの栄養学との違い

今でこそ分子栄養学を学ぶ方は増えつつありますが、管理栄養士の資格を取得するのに必須の考え方ではないので、なかなか認知されにくいものではあります。

ここでは大雑把に分子栄養学とこれまでの栄養学の違いをまとめておきます。

これまでの栄養学の「バランス良く」については別の記事でも触れましたのでご参照ください。

分子栄養学における「バランス」は高タンパク質、中程度の(良い)脂質でカロリーを充足させるというものになります。

これは何よりもタンパク質を重視する栄養学であることを示しています。

脂質については「糖質を取り過ぎないこと」の裏返しだと考えると分かりやすいでしょう。糖質を控えるので脂質から十分なエネルギーを確保していくという考え方です。

またこれまでの栄養学ではビタミンは「病気にならないように欠乏しない量を確保する」という考え方でしたが、分子栄養学においては「ビタミン必要量は個体差が著しく大きく(場合により100倍以上)なるため、それを考慮した上で十分量を摂取する」ということになります。