「バランスの良い食事」とは?

「バランスの良い食事」とは?

患者さんに指導するときに私達もつい使ってしまう「バランスの良い食事」という言葉。しかしそれは一体何なのでしょうか。ごはん、肉/魚、野菜…さしあたりこれで良いか、となってしまっては困ります。いえ確かに一食では困ることはないでしょう。しかしこれが数年、数十年人生の中で続くとどうなのでしょうか。

厚生労働省が提示する「バランスの良い食事」

コマに例える食事バランス

厚労省と農水省による国民向け食事ガイド

この図は皆さんもどこかで見られたことがあるのではないでしょうか。食事・食品をコマになぞらえ、その上を人間が走らされている(?)ものです。そしてコマの軸は何と「水・お茶」でした。

この図のコンセプトはコマを上手く回していくためにはどのように食事を組み立てたら良いかというものだと思うのですが、個人的にはなかなかイメージしにくいなという気がします。さらに詳しく見ていくとこの通りに計算しながら食べていくのはなかなか大変ということが分かります。

「ごはんを食べると太る」は誤解!、という誤解

ご自身の食事を詳しくチェックするために、この食事バランスガイドにはガイドブック版があります(こちら)。その中では「『ごはんを食べると太る』は誤解!」と見出しも付いています。「そうか誤解なのか!」と思いながら読み進めていってもその理由は全く書いておらず、脂分やカロリーが悪者にされているのでご注意を。今や体重コントロールを目的とした「糖質制限」という言葉は珍しくなくなりましたが、どうもこのガイドブックはそのような考え方を拒否しているように思われます。

大人の事情?

このコマの図は厚生労働省と農林水産省が作成したものです。農林水産省自ら特定の作物を否定するようなことはさすがにできないでしょう。戦前戦後の日本を支えてきたコメ農家を守ろうというのも無理からぬことです。いろいろな食品を「バランス良く」食べましょうという言い方になるのはもっともなことかなと感じます。

栄養素で考える習慣をつけよう

このコマで最上位に来ている「主食」という概念は意外と曖昧なものです。乱暴な言い方をすれば「腹太らせるもの」と言い換えても良いかもしれません。私たちは食欲を満たす必要はありますが、満腹になる必要はありません。必要なのは栄養であり、満腹ではないはずです。たまには満腹に食べて満足感を味わうのも良いでしょうが、それと健康とはまた別の問題だということを理解しておきたいところです。

最も大切な栄養素は「タンパク質」

もっとも大切な栄養素は「タンパク質」です。細胞を型作り、代謝・エネルギー産生をつかさどる酵素となり、さまざまなホルモンのもとになるタンパク質は生命を維持するために必須であり、十分な量が必要な栄養素です。日々の食事ではこれが足りているかどうかを第一義的に考え、そこに他の栄養素を肉付けしていくという方法がもっとも考えやすいのではないかと思います。これからいろいろな記事でその方法や考え方について触れたいと思います。