それでもコレステロールを気にしておくべき状況とは?
「悪玉コレステロールは本当に悪いのか?」では真の悪玉コレステロールについてお話ししました。では、コレステロールが高いときには何も気にしなくて良いかというとそういうことではありません。今回はこぶさんが診療の際にコレステロールを気にする局面について書いてみようと思います。
コレステロール値が高い方のデータを見るときに、意識しておくことが大きく3つあります。
それらについて見ていきましょう。
家族性高コレステロール血症
脂質代謝に関する遺伝子変異(1000種類以上あるそうです)から引き起こされる高コレステロール血症の状態を指します。
通常はLDLを受け止める受容体が機能しており、コレステロールなどをうまく運搬出来ています(図左)
家族性高コレステロール血症の場合、LDLを受け止める受容体に遺伝子変異が起きてうまく細胞にLDLをキャッチできません(図右)
したがって血液中にLDLが増えすぎてしまうことになります。
この場合でもすべてのLDLが悪いということではありませんが、LDLが血液中に長く存在することで劣化しやすくなると考えられます。
そうなると動脈硬化がどうしても進みやすくなります。
当然心臓病や血管の病気ののリスクも上昇することになります。
発生頻度はおおよそ500人に1人なので、日本全国で約25万人と推測されています。
この場合には薬による治療を検討する必要があります。
15歳以上の場合の家族性高コレステロール血症では、診断基準は下記のようになっています。
2.腱黄色腫(手背、肘、膝などの腱黄色腫あるいはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
3.FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)
つまり問診・家族歴・理学所見(診察所見)が大切ということですね。
↑アキレス腱付着部の肥厚
↑全周性角膜輪
角膜輪は高齢者に見られることもありますが、50歳以下でこの所見があった場合には家族性高コレステロール血症を疑う要素となります。
甲状腺機能低下症
「コレステロールが高い!」という状態のときにしばしば見逃されているのが甲状腺機能低下症です。
高コレステロールの原因の約10%ほどを占めるとされています。
代謝に不可欠な甲状腺ホルモンの低下により肥満、むくみ、脈拍減少、寒がり、記憶力低下などが起こります。
甲状腺ホルモンはコレステロールから胆汁酸という消化液の成分を作る刺激になるのですが、
これが低下すると胆汁酸が作れずコレステロールが蓄積してくる、ということなります。
こちらは血液検査で診断できますので健診などでコレステロールがひっかかった場合、
再検査の際には甲状腺ホルモンを一緒に測定してもらうようにしましょう。
この疾患の場合は甲状腺の治療をするとコレステロールが低下してくることになります。
すでに高血圧・糖尿病・心臓病がある
高血圧も糖尿病も血管を傷める病気です。
狭心症や心筋梗塞はすでに血管が傷んだ結果起こるものです。
これに高コレステロールが加わっている場合、お薬でコレステロールを調整する方が良いことも多いです。
かかりつけの先生、専門医の先生に相談して治療方針を決めましょう。
まとめ
以上コレステロールが高くなりやすい3つのケースについてお話しました。
コレステロール値が高いことについては過度に怖れることはないと思いますが、
そうかと言って放っておいてよいということでもありません。
「クスリ飲まなくてもいいよ」と「放っておいていいよ」はまったく別物。
状況に応じて、必要なチェックを受けると良いと思います。
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