ビタミンDは「多才」

ビタミンDは「多才」

ビタミンDは多彩な働きをするビタミンで、どちらかというとホルモンに近いという位置づけもされています。骨、免疫、がん、メンタルなどなど…多くの組織や状態に対して作用を持つまさに「多才な」ビタミンDですが、今日はこれを眺めてみることにしましょう。

ビタミンDとは

脂溶性ビタミンの一種

人間の皮膚でも作り出されるビタミンD、原料はコレステロールです(なので構造式も結構似ています)。

ゆえに脂に溶ける(脂溶性)と覚えておけば良いです。

ちなみに脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kがあります。

食べ物から摂るときには脂/油と一緒に摂ると吸収が良くなりますね。

ビタミンDの生成・代謝

ビタミンDはコレステロールから作られますが、作られる場所は皮膚です。

その際、紫外線(UVB)の力を借りて作られます。

日光の力が大切で、ビタミンDは「サンシャイン・ビタミン」と呼ばれることもあります。

さて、皮膚でできたビタミンD…これだけで完成ではありません。

肝臓に運ばれて加工され、腎臓に運ばれて活性型となり、これで完成となります。

ビタミンDに限ったことではありませんが、システムとして複雑ですがよくできています。

おそらくさまざまな「調整」が肝臓・腎臓で加わるのでしょう。

ともかくこれでビタミンDが完成し、ここから血液の流れに乗って全身の臓器に運ばれることになります。

血液検査でビタミンDを測ってみる

医療機関ではビタミンDを血液検査で測定することもできます(保険適用外のことが多いです)。

こぶさんのところでも測ることがありますが、8割以上の方が「欠乏」の判定で驚かされました。

本当に日本人に不足しているビタミンだったのです。

特に日焼けに敏感な女性はほとんどの方が「不足」「欠乏」でしたので、

女性の方はビタミンD補給についても積極的に取り組みたいところです。

ビタミンDの多才ぶりとは

カルシウム代謝

ビタミンDが細胞に入っていくために必要な「受容体」はさまざまな臓器にあります。

骨、腸、腎臓、副甲状腺といった臓器の細胞にビタミンDが作用し、カルシウムの量を調節してくれます。

たとえば腸からはカルシウムの吸収を良くする、腎臓ではカルシウムを尿へ排出する量を抑えるなど…

そしてそれが骨を保つために有利に働くということになります。

免疫に関する働き

ビタミンDの受容体は体内防御システムの要である白血球にも存在し、免疫を保つために作用します。

また、ビタミンDは「カテリジン」という抗菌タンパク質や「β-ディフェンシン」という皮膚バリアに関する物質を作らせる働きもあります。

さらに、感染症に対するビタミンDの作用は徐々に有名になりつつあります。

以前から指摘されていたインフルエンザの予防効果に加え、新型コロナウイルス感染症についても予防効果や重症化予防が言われるようになりました(*1)。

今やウイルス感染症領域において、ビタミンDはビタミンCなどと並んで防御力アップの重要な栄養素と言えるでしょう。

アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルス感染症に罹患した際、プレス発表でビタミンDも投与されていたとされています。

また、ビタミンDをサプリメントなどでしっかり摂る(10000IU~20000IU)と、花粉症などのアレルギー性鼻炎や気管支喘息も改善する例があるようです。

*1 Grant William B et al. Evidence that Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths. Nutrients 2020, Vol. 12(4)

抗がん作用

がん細胞を攻撃するのはやはり白血球です。そういった免疫の側面から抗がん作用をもたらすのかもしれません。

またビタミンDの受容体は「核内受容体」といって細胞の核に存在することが分かっています。

つまり、細胞分裂そのものにも関与するのかもしれません。

現段階での文献から見るビタミンDの抗がん作用は、発がん抑制ではデータは出ていませんが、癌死亡率減少には関与する、というものです(*2)。

*2 Kim Hanseul.Vitamin D Status and Cancer Incidence, Survival, and Mortality.Advances in experimental medicine and biology, 2020,Vol. 1268

メンタルに対する働き

冬期うつ」という言葉があります。

日照時間が短くなる冬期、幸せホルモン「セロトニン」、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌も落ち、

気分も塞ぎがちになってしまうことがあります。

ビタミンDもこの「冬期うつ」に関連している可能性があります。

ビタミンDを摂る

日光から

さきほども書きましたとおり、日光を浴びると皮膚でビタミンDが生成されます。

しかしそれには条件があります。

・日焼け止めを使わない
・窓越しの日光ではダメ
・午前10時から午後3時の日光を浴びる
・1回に20-30分、週に最低2回
・冬の日光では紫外線のチカラが落ちるため長く当たらないといけない

ということで意外と日照だけでビタミンDを満たすのはなかなか大変そうですね。

とは言え、日光浴を軽んじることなく、しっかりと浴びたいものです。

食品から

日本人のビタミンD摂取基準は5.5μg(220IU)です。上記食品でビタミンDがとれます。

鮭は上記の中でも一番ビタミンDが多い食品です。鮭一切れでビタミンD25μg(1000IU)が摂れる計算になります。

しいたけは傘の内側を天日干しするとビタミンDが増すことが知られていますので、ひと手間かけても良いでしょう。

ビタミンDは毎日摂らなければ流れて行ってしまうものでもないので、週間単位で考えてみることもアリですね。

サプリメントから

ビタミンDのサプリメントは比較的安価であるため、おすすめサプリメントのひとつです。

サプリメントにも含有量がいろいろあるのでご自身に合ったものを摂りましょう。

高用量(1日10000IU~20000IU)を摂る場合には高カルシウム血症などの副作用のリスクがありますので、医師の指導の下、採血でチェックしながら取り組むのがおすすめです。

また「高用量のビタミンDサプリメントを摂る場合はビタミンKを併用しましょう」と書かれていることも多いので注意が必要かもしれませんね。

参考

California Gold Nutrition, ビタミンD3、125mcg(5,000IU)、魚ゼラチンソフトジェル360粒
製造元 カリフォルニア ゴールド ニュートリション